ラケットシステム11

Bちゃんの物語第九章。

ラケットシステムに負のエネルギーを供給し続ける強化記憶を、エネルギーダウンさせる方法。今日はまた別の方法をご紹介しましょう」
そう言うと、カウンセラーは微笑んで、言葉を付け加えました。
「そうでした。もう、Bさんはそれをしていましたね」
「え?」Bさんは驚いた表情になりました。
それからしばらくして、Bさんが言いました。
「もしかして、この前お話ししたようなこと?」
カウンセラーは微笑んでいます。
「カウンセリングでお話している間に、あの時、今迄記憶のどこかに置き去りにしていた色々な記憶を思い出して、確かに、とても楽な気持ちになりました。私がボタンを一人で留めることに成功した日、お母さんが笑顔で抱きしめてくれたこと。すっかり忘れていたけれど、確かにそんなこともありました。あの時、お母さんは私の成長を喜んでいてくれてたんだって、今は心から思えます。それから、お父さんも。妹とは違うんだから私はそのままでいいって、言ってくれた。もしかしたら、お父さんは、私が妹に嫉妬していたのを知っていたのかもしれませんね。それで、私に、精一杯愛情表現してくれた。無口で不器用なお父さんだけど、あの時の言葉は、今思えば、とても力がこもっていた。それから、彼氏も、強がらなくても普通にしていればいいって言ってくれた。素直になりたい、甘えたい、けど出来ない、そんな私をちゃんと見ていてくれたんだなって、そう思えます。それから、お母さん!今また、思い出しました!お母さんがちゃんと私を愛してくれていたんだって思える記憶が、他にもありました!」
「思い出すごとに、気持ちが楽になっているようですね」
「はい、本当に。こんな素敵な記憶、どうして、今迄、全然思い出さなかったんだろう?」
「不思議に思われているのですね。でも、これはよくあることです。というか、強化記憶の性質ですね。脚本の信条を支持する記憶ばかりを収集して、脚本の信条に反する記憶は、無意識のうちに心の片隅に追いやってしまうのです」
「それって、前に聞いたことがある確証バイアスだと思っていいですか?」
「いいと思います。強化記憶は、全体を見ないで、それにとって都合のいい出来事だけを凝視する、つまりディスカウント(値引き)する、その繰り返しの中で、どんどん威力を強めてきたのです」
「だから、無視して心の底に捨ててきた、脚本の信条に合致しない記憶を、掘り起こしていくことで、強化記憶の負のエネルギーを削ぐことが出来るのですね!」
[ 2018/03/28 08:30 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

ラケットシステム10

Bちゃんの物語第八章。

「強化記憶が、不幸の連鎖のラケットシステムを大きく動かしているということ、そしてこの不幸の連鎖は自分で止められるということは、わかりました。では、強化記憶の威力を削ぐためには、いったいどうしたらよいのでしょうか?」
Bさんの質問に、カウンセラーが答えました。
「いくつか方法があります。今日は、そのうちの1つについて、考えていきましょう。それは、その記憶にあるディスカウント(値引き)を正すことです」
「記憶にあるディスカウント?」
「はい。それでは、幼稚園の頃に妹さんと同じような白いレースのドレスをおねだりして買ってもらえなかった時のことから、思い出していきましょう」
「はい」
「その時、お母さんは、何と言いましたか?」
「幼稚園にそんな服は着ていけないでしょ。もっとお姉ちゃんらしい服にしなさい」
「それを、Bさんはどうとりましたか?」
「やっぱり、私は妹みたいに小さくて可愛らしくないから、お母さんは私のことを妹ほど好きじゃないんだ。だから買ってもらえない」
「それは、脚本の信条ですね」
「えーっと・・・脚本の信条はディスカウント(値引き)でしたね」
「そうです。お母さんが言ったことを、脚本の信条と離れて解釈すると、どうなりますか?」
「・・・真っ白だから汚れが目立つし、レースなんかすぐ引っ掛けて破いてしまう。お外遊びも多い幼稚園に着ていくには、ちょっと…」
「今、言ってみて、どんな感じがしていますか?」
「・・・不思議な感覚です。確かに、お母さんがあの時しかめっ面をしていたのも、私のことを好きじゃないから、ではなくて、幼稚園に着ていくための服を買いに来ているのに、それは不向きだ、っていう気持ちだったんじゃないかなって、今初めて、そう思いました」
「気分はどうですか?」
「なんだかホッとしました。そこまで私はお母さんに嫌われていたわけじゃない・・・」
「こんなふうに、強化記憶の中には脚本の信条が浸潤していて、ディスカウント(値引き)状態になっています。強化記憶にあるディスカウント(値引き)を正していくことで、強化記憶が持つ不幸への威力は弱まります」
「他の記憶についても、ひとつひとつ、ディスカウント(値引き)を正していくと良いのですね」
「はい。ご自分でも出来ると思いますよ。難しい時には、お手伝いします」
[ 2018/03/25 08:35 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

ラケットシステム9

Bちゃんの物語第七章。

脚本の信条を強める記憶が、強化記憶でしたね」Bさんは、そう言うと少しの間、考え込みました。
「沢山あります。数えきれないくらいに!」。
沈黙の後に出たBさんの言葉は驚きに満ちていました。
「彼氏が電話をくれなかった時の記憶。彼氏と喧嘩した時の記憶。学生時代に、陽気で華やかな下級生が人気があって、自分はやっぱり誰にも好かれないって思った時の記憶。可愛い洋服は妹には許されるけど私には許されないって思って悲しかった記憶。無邪気な妹ばかりがみんなに注目されていると感じて寂しかった記憶。妹ばかり抱っこしてもらってずるいなと思った記憶…」。

(私は、取るに足らない存在だ。それは私が小さくて可愛らしくないからだ)
(他者は、小さくて可愛らしくない私を愛してはくれない)
(人生は、孤独・・・)

嫌なことがあるたびに、上記の否定的な脚本の信条を復唱してきたこと、そうすることで、さらに脚本の信条を強めてきてしまったこと、にBさんは気がつきました。
また、嫌なことがあったその時だけでなく、その記憶はいつまでも残って、何もない時でさえ、時々脳裏によみがえっては、脚本の信条を強めてしまっていることにも、気づきました。
「強化記憶は、グレースタンプなんですね」とBさんは言いました。「思い出すごとに、嫌な気持ちを溜めていって、爆発してしまっていました。よく、彼氏に言われるんです。なんで、そこで怒るの?って。二人で楽しい時間を過ごしているはずだったのに、何かの拍子に昔の記憶がよみがえってきて、そしたら、もう自分では止められなくなって、感情を爆発させてしまって…」。
そしてまた脚本の信条を強化してしまう。この悪循環。
「自分で嫌な気持ちの悪循環を作り出していたなんて…」Bさんは絶句しました。
「そう。自分で作り出してきたものだから、自分で変えることも出来るんですよ」カウンセラーの言葉が、静かにBさんの心の中に入っていくのでした。


[ 2018/03/22 13:06 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

ラケットシステム8

Bちゃんの物語第六章。

彼氏とのいつもの喧嘩が、ラケット的表出心理ゲームであることを知った時、Bさんは、「もう心理ゲームはやめます」と言いました。すると、カウンセラーが、「行動の計画や目標を決める時は、~をやめる、~をしない、というのではなくて、~を始める、~をする、という言い方で決めるのが良いですよ」と教えてくれました。
その理由は次のようなものでした。
1つには、「~をやめる」「~をしない」という計画だと、具体的に何をしたら良いのかが不明確で、結局何も出来なくなることが多いこと。
また、「~をやめる」「~をしない」という計画を立てている時には、必然的に、「~をしている」像が心の中にイメージされてしまうため、「~をする」イメージが強化されてしまい、行動がそちらに引きずられる、ということでした。
「確かに」とBさんは、思いました。子どもの頃、運動会でこけないように、こけないように、と思っているときに限って、こけてしまったことが思い起こされました。
「今まで何度も、もう彼氏との喧嘩はしない、って決めていたのに、やめられずに繰り返してしまっていたのは、そういう理由からだったのですね」と、Bさんが言うと、カウンセラーが言いました。「そうでしょうね。それと、ラケットシステムというディスカウント(値引き)の環の中から眺めているときは、そこにあるディスカウント(値引き)になかなか気づけないものです。ディスカウント(値引き)したままディスカウント(値引き)をやめる、ということは、不可能だと思いますよ」。
さらにカウンセラーは続けました。「そして、今、Bさんは、ラケットシステムの外に一歩踏み出すことが出来たので、そこにあったディスカウント(値引き)を真っ直ぐに見つめることが出来るのですよ」。
「そうですね。彼氏との喧嘩の時は、いつも、心の中で、自分のことも彼氏のことも、ちゃんとは見ていなかったと思います。私はどうせ~、とか彼氏はどうせ~とか、過去の亡霊に取りつかれたみたいに、最初から否定的な見方しかしていなかった。喧嘩をやめようと思っても、それがどういう意味を持っているのかとか、考えることもなかったし、無意識のままに、ラケットシステムのディスカウント増強の回転数を増やしていたんでしょうね」。
Bさんは、ラケットシステムという分析モデルを手にしたことで、自分のこと・彼氏のこと・状況を、ディスカウント(値引き)抜きに見ることが出来ることに、勇気を得ました。
「次は、ラケットシステムのもう一つの構成要素、強化記憶について、見ていきましょうか」
カウンセラーの言葉に、笑顔でうなづくBさんでした。
[ 2018/03/20 18:48 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

ラケットシステム7

Bちゃんの物語第五章。

Bさんは、また、カウンセリングの中で、自分が彼氏との間で繰り返している辛いやりとりが、「心理ゲーム」であるということも知りました。
そして、「ラケット的表出」の1つである心理ゲームをやめることも、心に誓いました。
具体的には、会いたくて会いたくて我慢できなくなるぎりぎりまで感情を溜めるのではなくて、ちょっと声を聞きたくなった時に彼氏に電話をする、ことにしました。
我慢している間にあれこれ考えて例の脚本の信条を読み上げてしまうことを、避けることにもなると思ったからです。(私は可愛くない取るに足らない存在だから、彼氏に放っておかれているんだ)とグレースタンプを溜めて心理ゲームで爆発している現状を、変えようと決めたのです。
それに、声を聞きたいときに彼氏に電話することは、(妹のように無邪気に気持ちを表現してはいけない)という自分の心の中の縛りを解くにも良さそうです。後に、Bさんは、これが「子どもであるな」のインジャンクション(禁止令)であることも知り、「子どもであってもいいんだよ。子どものように素直であっていいんだよ」と、自分にパーミッション(許可)を与えていくことも、意識的に始めるようになりました。
ドライバー強くあれ」も強いとわかったので、「感情を自由に表してもいいんだよ」とアローワーを与えていくことも始めました。
もし、心理ゲームになってしまったら、それに気づいた時点で、「ごめん。いつもの小さい私が心の中で暴走しちゃった。もうこの話はやめようね」と嫌な話の流れを断つことも決めました。
自分が子ども時代に思っていたこと、それからずっと心にあった脚本の信条のことも、彼氏に話したいと思っています。

(私は、私として価値がある)
(他者は、ありのままの私を愛してくれる)
(人生は、温かい)

新しい脚本の信条を心に根付かせながら、新しい行動をとっていくことで、負のスパイラル「ラケットシステム」を停止させる希望がBさんの中に出てきました。
[ 2018/03/19 08:23 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
プロフィール

坂田カウンセリングオフィス(坂田和代)

Author:坂田カウンセリングオフィス(坂田和代)
東京・大阪でのメンタルクリニック・専門学校相談室・NPOカウンセリングルームのカウンセラーを経て、2016年4月兵庫県姫路市で「坂田カウンセリングオフィス」を開業しました。文明の利器にはめっぽう弱いというセルフイメージに打克つべくブログを始めました。よろしくお願いします。



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