ディスカウント7

「心気症」という病気があります。

これは、健康体でも時々感じるちょっとした体の不調(咳が出る、胃もたれする、動悸が激しいなど)に過敏になり、「自分は重篤な病気ではないか」という考えにとらわれるものです。
その考えは、病院で検査を受けて「異常なし」の数値を見ても、「問題ありません」という医師の言葉を聞いても、解消されません。
次から次へと病院を渡り歩いて検査を受けたり(ドクターショッピング)、家族や周囲の人に「自分は病気なのではないか」「自分は病気であるのに違いない」など執拗に訴えたりすることもあります。

心気症の場合も、確証バイアスによるディスカウント(値引き)が生じていると考えられます。
すなわち、咳が出ている・胃もたれしている・動悸が激しいなど、「自分は病気なのではないか」という考えを支持する事柄は、非常に敏感に感知する一方で、咳が出ていない・胃もたれしていない・鼓動がゆっくり規則正しいなど、「自分は病気」という考えを支持しない事柄は、意識されることがありません。
また、病気ではないことを示す検査結果や医師の診断も、受け入れられません。

しかし、心気症の方に、「確証バイアスがかかっていますね。客観的に見てください」と指摘し助言しても、多くの場合、効果はありません。その指摘や助言も、確証バイアスではじかれてしまうからです。
「気にしすぎ!!」と怒っても、同じです。

指摘や助言、叱責が、効果を持たないのは、心気症に限らず、確証バイアスが強くかかっているほとんど全ての方に言えることでしょう。

また、心気症は、「不安性障害(不安神経症)」に分類される心の病気です。
どういうことかというと、心の中にある不安が大きな原因になっている病気ということです。
病気そのものへの不安、死の不安、将来の不安、人間関係の不安など、その原因は人それぞれです。
治すためには、心に大きく占めている不安を和らげることが必要です。
指摘・助言・叱責などは、患者さんの孤独感を強め、かえって不安を強めることになってしまい、症状を悪化させてしまいます。
不安を和らげるために、まずは、しっかりと患者さんの訴えを聴いてあげてください。
しかし、「自分は病気なのではないか」という患者さんの考えを強化するような受け答えは避けてください。「そう。病気なのですね。大変なことですね」、「もっと大きな病院でちゃんと調べてもらいましょうね」などは、よくありません。
「病気なのではないかと思って、とても不安なのですね」と気持ちに寄り添う言葉や、「どんな時に、病気かなと思うのですか?」と不安な気持ちを話しやすくなる言葉を、かけてあげてください。
「誰もわかってくれない」という孤独感が和らぎ、不安が和らいでくると、確証バイアスという説明にも耳を傾けてくれるようになります。

心気症の患者さんだけではなく、確証バイアスが強くかかっている人への対応として、こちらからの一方的な指摘・助言・叱責をするのではなく、まずは、その方の気持ちを理解しようとこちらから寄り添うことが、大切です。
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[ 2017/09/22 10:17 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

ディスカウント6

いつもご訪問ありがとうございます。
記事更新は平日の月・水・金と決めてご案内していたので、その通りにしていたら5日ぶりとなってしまいました。
今後は、曜日を決めず、書ける日に更新する、ということにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

今日は、「確証バイアス」についてお話ししたいと思います。
これは、認知心理学・社会心理学の用語で、「バイアス」というのは、「偏り」・「歪み」とか「偏見」とかいうような意味です。

確証バイアスというのは、自分の頭の中にあること(考え・信念・願望など)にとらわれ、それを支持する事柄にばかり目が行き、支持しない・相反する事柄は無視したり見落としてしまったりする、ということを言います。

例えば、Aさんのことを意地悪な人だなと思っているとき、Aさんが不愛想な顔をしていたとか、Bさんにきつい言葉を投げていたとか、「Aさんは意地悪な人」という自分の考えに合致する出来事ばかりが、目に入ってきます。
一方、Aさんが猫を優しく撫でていたとか、迷子を交番に連れて行ってあげていたとか、「Aさんは意地悪な人」という考えに反するような出来事は、軽くスルーしてしまいます。

また、「自分は皆から嫌われている」という思いで頭がいっぱいになっているときには、同僚の素っ気ない素振りばかりが気になり、同僚の優しい視線、上司の愛情ある指導などには、気がつかないものです。

会議などで、自分の意見に賛成してくれる人の意見にはしっかり耳を傾けるけれど、反対意見ははなから聞く気がない、というのも、確証バイアスだと言えますね。

詐欺の被害者の場合も、この確証バイアスがかかっていると考えてよいでしょう。
犯人の巧みな話術により、「これは凄い儲け話だ」といったん信じ込んでしまうと、凄い儲け話であることを信じさせる犯人からの情報のみを信じ、家族の反対意見やテレビで流れている詐欺事件のニュースなどには、耳を貸さない状態になってしまいます。
結婚詐欺でもそうですね。
「あの人は私を愛してくれている、結婚しようと言ってくれている。あの人と結婚したい」という願望で頭の中がいっぱいになっていると、相手の甘い言葉だけを受け入れて、相手がしばしばお金の無心をしてくるとか、相手の都合の良いときにしか会えないとかということについては、頭の中に受けつけない状態になってしまいます。

「確証バイアス」というものがある、ということを頭の片隅に置いて、ディスカウント(値引き)による害を防いでくださいね。

[ 2017/09/20 09:30 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

NPO法人IATH理事を辞任しました

この度、一身上の理由によりNPO法人IATHの理事(副理事長)を辞任いたしましたので、ご報告いたします。
5月に辞任の意思を理事会に伝え、6月に辞任届を提出しておりましたが、一昨日の臨時総会において後任理事が決まりましたのをもちまして、正式に辞任となりました。
お世話になりました皆様に感謝申し上げますとともに、引き続き新理事会にご協力いただけますようお願い申し上げます。
[ 2017/09/20 08:23 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

ディスカウント5

アッシュの実験も有名です。

この実験では、見本となる線分と同じ長さの線分を選択肢から選ばせる、という課題を行います。
1人で答えるとほぼ100%正答する簡単な課題が用意されています。
この課題を、集団で、順番に口頭により答えさせていきます。
このとき、実は、真の被験者は1人だけで、残りの回答者はサクラ、実験協力者です。
実験協力者たちは、あらかじめ、課題のいくつかで「誤答」をするよう指示されています(正答は選択肢Aの線分なのに、選択肢Bの線分であると全員が答えるように、など)。
当然のことながら、真の被験者には知らされていません。
実験協力者たちが次々に誤答をしていったとき、真の被験者はどう答えるのか、というのを調べるのが、この実験の狙いでした。

さてさて、結果は・・・
課題の全てで正答を述べた被験者は、25%。
他の75%の被験者は、複数の課題のどこかで、他の人たちの答えに合わせて「誤答」を選んだというのです。

明らかに長さの違いがわかる線分であっても、「皆がそう言うんだから・・・」と、周りに同調してしまう・・・
真実から目を背けてしまう、ディスカウント(値引き)してしまう・・・

「皆」というのは、3人以上ということも実験で調べられています。
意外と少ない人数で、集団圧力が発生するのですね。
けれど、もし1人、同調しない人がいれば、同調率は下がる、ということもわかっています。

あなたは、集団圧力に耐えて、真実から目をそらさず(ディスカウントせず)に居られますか?
とても勇気の要ることですが、もしそれができたら、他の人たちがディスカウントせずに済むために貢献できるということです。

[ 2017/09/15 12:28 ] 未分類 | TB(0) | CM(2)

ディスカウント4

こんな実験があります。

大学生が被験者ですが、彼らにはこれが実験であることは知らされていません。
初めて会う先生の講義前に、その先生の紹介文が学生たちに配布されました。
紹介文には、学歴等の他に、先生をよく知る人からの紹介として、性格についても書かれています。
①「彼はどちらかというと、あたたかくて、勤勉で、批判力に優れ、現実的で、決断力がある」
②「彼はどちらかというと、冷たくて、勤勉で、批判力に優れ、現実的で、決断力がある」
この①と②の2種類の紹介文が学生の半数ずつに配られました。経歴等他の情報は同じです。
先生の講義の後、先生についての印象・評価を学生たちに訊いたところ、①の紹介文(あたたかい)を読んでいた学生は、②の紹介文(冷たい)を読んでいた学生に比べて、先生のことを、「思いやりがあって、社交的で、ユーモアがある人」と答えた、という結果が出ました。
また、先生との討論会において、①の紹介文(あたたかい)を読んでいた学生の発言率は56%、②の紹介文(冷たい)を読んでいた学生の発言率は32%という結果も出ました。

同じ教室で同じ先生の講義を受講したにもかかわらず、「あたたかい」という紹介文を読んだ学生と「冷たい」という紹介文を読んだ学生とでは、先生に対する見方や接し方が大きく異なった、というのです。
これは、ケリーという社会心理学者の行った実験ですが、皆さんはどう思われますか?

そこにあるものをそのまま見るということ、ディスカウント(値引き)しないということは、私たちが思っている以上に難しいことのようです。
事前情報や他者の評価・噂によって、こんなに簡単に、印象操作されてしまうのですね。
ちょっと怖い・・・
でも、こういうことがあるんだということを知っておくだけでも、少しはディスカウント(値引き)を防げるのではないかと思います。
[ 2017/09/13 11:27 ] 未分類 | TB(0) | CM(4)
プロフィール

坂田カウンセリングオフィス(坂田和代)

Author:坂田カウンセリングオフィス(坂田和代)
東京・大阪でのメンタルクリニック・専門学校相談室・NPOカウンセリングルームのカウンセラーを経て、2016年4月兵庫県姫路市で「坂田カウンセリングオフィス」を開業しました。文明の利器にはめっぽう弱いというセルフイメージに打克つべくブログを始めました。よろしくお願いします。



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