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夢~フロイト⑮~

「夢は願望充足である」「夢は、ある(抑圧された)無意識の欲望の(偽装された)成就である」と言ったフロイトですが、そうではない夢の存在も認めました。

それは、「外傷夢」。
虐待や暴力、事故、災害などで負った心的外傷によって、夢の中でその外傷経験の情景が繰り返し再生されている、という夢。

「外傷夢」は、「願望充足」ではなく「反復強迫」であると、フロイトは考えました。

フロイトは、戦争神経症(現在のPTSD/心的外傷後ストレス障害)の患者さんの治療を行う中で疑問を持ちました。
帰還して今は戦地での恐ろしい体験から離れているにもかかわらず、繰り返し繰り返し、戦地での恐怖体験を夢に見るのは、なぜなのか・・・

そして、フロイトはある仮説を立てました。

人間の心には、外界からのエネルギー(刺激)から心を守る刺激保護障壁があり、外界からのエネルギーの質や量を調整して内部に取り込んでいる。
ところが、何の準備もない状態で突然、恐怖体験をすると、この刺激保護障壁が決壊して、外界からのエネルギーが内部に流れ込んできてしまう。
心は、突然流入してきた外部からのエネルギーに驚いて、なんとかそれを押し返そうと、内部のエネルギーを集中させる。そのため、いつもはエネルギーを行き渡らせていた心の他の箇所に、エネルギーが届かなくなってしまう。これが、症状として現れたのが、感情麻痺や思考停止。

刺激保護障壁の決壊部分(心的外傷)に、心のエネルギーが固着している状態が、戦争神経症ではないか。

そして、何度も繰り返し恐怖体験をフラッシュバックするのは、「反復強迫」であるとみなしました。

かつて心的外傷を負ったときには自分の意思でどうにもできなかったことを、今度は自分の意思で(ただし無意識に)起こすことでやり直そうとせずにはいられなくなっているのではないか、結果的に何度も何度も自分で自分を傷つけることになろうとも、と。
つまりは、「外傷夢」は、やり直したい、生き直したい、という願望を夢の中で充足させようと試みたものの、失敗している、それでもまた同じことをしてしまう、そういうことではないか、と。

これ以降、フロイトは、「夢は願望充足」とした持論を、「夢は願望充足の試み」と修正しました。

ちなみに、フロイトは、自分ではどうにもできなかった幼少期の親との関係を、成人してから他の人との間で再現してしまうのも、「反復強迫」であり、それが治療者に対して出てきているものを「転移」と名付けました。

(次回に続きます)





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[ 2022/06/10 07:34 ] | TB(0) | CM(-)

夢~フロイト⑭~

フロイトは、一晩に見る夢は全て、同じ意味を持つ夢だとしました。

たしかに、さっきの夢の続きだなと思う夢をみることもありますが、彼によれば、全然違う内容の夢も、無意識の願望は同じなのだそうです。
一晩の初めの方に見る夢ほど夢の仕事による歪曲が大きく、後の方に見る夢はそれより大胆で明瞭な夢であることが多い、とも言っています。

また、無意識の願望が意識化されないうちは、その願望の夢は、形を変えて何度も現れるので、1つの夢の解釈がうまくできなくても、それにこだわらず、次に出てくる夢、より解釈しやすい夢を解釈すればよい、とも言っています。

数週間、数か月という長い期間に渡って見た夢が、共通の地盤を持っていることもあり、夢を系列的に解釈する(シリーズとして考える)ことの有用性にも触れています。

(次回に続きます)

[ 2022/06/02 15:42 ] | TB(0) | CM(-)

夢~フロイト⑬~

一見「願望充足」には見えない「不安夢」・「懲罰夢」も、「願望充足の夢」である、とフロイトは言いました。

「不安夢」というのは、起きたときに、「嫌な夢を見た」「怖い夢だった」と思う夢のこと。
「懲罰夢」というのは、夢の中で、何らかの形で罰せられる夢のこと。

フロイトは、「局所論」の後、「構造論」という心の仮説を立てています。

その中で

「イド(エス)」は、リビドー(性欲動、エネルギー)の源泉で、「快楽原則」に従う(快を欲し、不快を避ける)心
「自我(エゴ)」は、「現実原則」に従い、イドと超自我の間を取り持ったり、外界への適応をはかったりする心
「超自我(スーパーエゴ)」は、エディプス期を経て身につける、「~すべき」「~してはいけない」という心

としていますが、

「不安夢」は、イド(エス)の性欲動による願望が、超自我(スーパーエゴ)による検閲を押し通った結果、自我(エゴ)が不安になるもの、としました。
つまり、検閲で抑えきれないほど強い願望が夢となってしまったために、自我(エゴ)がそれを受け入れられずに、夢から覚めた後に、「嫌な夢を見た」「怖い夢だった」と思うのだ、ということです。

「懲罰夢」は、検閲で抑えきれなかった強い願望が夢に出てしまったことを、超自我(スーパーエゴ)が夢の中で罰を与えることで、なんとか心の平衡を保とうとしているもの、つまり、他の多くの夢がイド(エス)や自我(エゴ)の願望充足であるのに対して、「懲罰夢」は、超自我(スーパーエゴ)の願望を充足している夢である、としたのです。

(次回に続きます)
[ 2022/05/25 07:32 ] | TB(0) | CM(-)

夢~フロイト⑫~

「夢は願望充足である」ということについて、フロイトは、次のようにも言っています。

「ある一つの夢の中にいくつかの願望充足が含まれていたり、ある一つの願望充足が他の願望充足を隠蔽していて、その衣をはいでいくと、一番下のところで非常に早い幼年時代の願望の充足実現にぶつかることもある。

夢は極端に利己主義的で、すべての夢の中には変装しているにせよ『可愛い』私が登場する。夢の中で満たされる願望は通常、この『自己』の願望である」

(次回に続きます)



[ 2022/05/16 09:41 ] | TB(0) | CM(-)

夢~フロイト⑪~

昼間の些細な経験や印象など(日中残渣)が、夢の素材として利用され、それらに姿を借りて、抑圧された無意識の願望・欲望が夢として表出される、とフロイトは考えました。

そして、「性欲動ほどに、小児期以来強大な抑え込みにあってきた欲動はない。性欲動は、どんな他の欲動にもまして、多くの強力な無意識の欲望を後に残す。これらの欲望が睡眠状態の中で夢を作り出す」と、性欲動を特に重視しました。

夢の理論に限らず、「リビドー」、「小児性愛論」や「エディプス・コンプレックス」など、性を重視するのが、フロイトの理論の大きな特徴ですが、これは、フロイト自身の父親との関係や当時の時代背景が大きく影響しているのではないかと、後の研究者たちは指摘しています。

(次回に続きます)
[ 2022/05/10 15:29 ] | TB(0) | CM(-)
プロフィール

坂田カウンセリングオフィス(公認心理師・坂田和代)

Author:坂田カウンセリングオフィス(公認心理師・坂田和代)
メンタルクリニック・専門学校相談室・NPOカウンセリングルームのカウンセラーを経て、2016年4月「坂田カウンセリングオフィス」を開業しました。文明の利器にはめっぽう弱いというセルフイメージに打克つべくブログを始めました。よろしくお願いします。



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